1. TOP
  2. コラム一覧
  3. 生活習慣と髪の健康
  4. 秋の抜け毛はなぜ増える?季節性脱毛のメカニズムと見極め方

秋の抜け毛はなぜ増える?季節性脱毛のメカニズムと見極め方

秋の抜け毛はなぜ増える?季節性脱毛のメカニズムと見極め方

秋になると、シャンプー時やブラッシング時に抜け毛の量が増えたと感じる人は少なくない。実際、人の毛髪には季節による変動があり、晩夏から秋にかけて抜け毛が増える傾向が複数の研究で報告されている。こうした変化には、毛周期(ヘアサイクル)の季節変動が関係していると考えられている。一方で、季節による自然な変動なのか、対策を検討すべきサインなのか判断がつかず、不安を抱える人も多い。本稿では、秋に抜け毛が増えるとされる背景を研究知見も交えて整理したうえで、自然な範囲の目安と注意しておきたいサインの見分け方、季節変動の範囲を超えて抜け毛が続く場合に検討できる医学的根拠のある対策までをまとめる。

秋に抜け毛が増えるのは自然な現象か|毛周期から見る仕組み

毛周期の3段階と、抜け落ちるタイミングの関係

髪の毛は一本ごとに、伸び続ける「成長期」、成長が止まる「退行期」、毛穴にとどまったまま次第に抜け落ちる準備をする「休止期」というサイクルを繰り返している。休止期に入った毛は、数か月ほど頭皮にとどまったのち、新しい毛に押し出されるようにして自然に抜け落ちる。このサイクル自体は一年を通して常に起きているが、休止期に入る毛の割合は一定ではなく、季節によって変動すると考えられている。

研究で示されている季節性のパターン

スイス・チューリッヒ大学病院皮膚科のKunz M、Seifert B、Trüeb RMらが、抜け毛を訴える健康な女性823名を対象にトリコグラム(毛髪の状態を顕微鏡で分析する検査)を用いて行った研究(Dermatology誌、2009年)では、休止期にある毛の割合には季節変動がみられ、夏に高くなる傾向が報告されている。また、Randall VAとEbling FJによる研究(British Journal of Dermatology誌、1991年)でも、晩夏から秋にかけて抜け毛が増える季節性が確認されている。これらの結果から、毛周期の季節変動が秋に抜け毛を実感しやすくなる背景の一つと考えられている。

なぜ毛髪に季節変動が起こるのか

人の毛髪に季節による変動がみられる理由は、現在も完全には解明されていない。日照時間や紫外線、気温などの季節要因との関連が検討されているものの、「夏の紫外線による頭皮ダメージが原因で、秋に抜け毛が増える」といった直接的な因果関係が確立されているわけではない。 現時点では、特定の一つの原因で説明するよりも、毛周期そのものに季節性があることが複数の研究で観察されている、と捉えるのが適切である。

秋の抜け毛、毛周期からみる仕組み

秋の抜け毛、どこまでが自然な範囲か|本数の目安

健康な状態でも、髪の毛は1日あたり50〜100本程度抜けることが一般的な目安として知られている。ただし、実際の本数は洗髪頻度や毛量などによって大きく変わるため、「100本を超えたら異常」といった診断基準ではない。秋はこの範囲の中でも抜け毛の本数がやや多くなりやすい時期とされ、普段より抜け毛が目立つと感じても、その多くは一時的な季節変動の範囲内にとどまることが多い。普段と比べた変化や、薄毛の進行がみられるかをあわせて、総合的に確認することが重要になる。

時期 研究で報告されている傾向
一部研究で小さな季節変動が報告されている
休止期毛の割合が高まる傾向が報告されている
晩夏〜秋 抜け毛が増える傾向が報告されている
晩夏〜秋と比較して抜け毛が少ない傾向がみられる研究がある

※季節変動には個人差があり、すべての人が同じ時期に同程度の変化を経験するわけではありません。

季節性の抜け毛と、注意しておきたい脱毛の見分け方

季節性の変動だけではない可能性を考えたいサイン

抜けた毛の根元の色や形だけを見て、季節性の抜け毛か病的な脱毛かを自己判断することは難しい。むしろ、抜け毛の本数だけでなく、髪全体の密度や生え際・頭頂部の変化、脱毛が続いている期間などを見ることが重要になる。例えば、生え際が徐々に後退している、頭頂部の地肌が以前より目立つ、髪が細くなってきた、円形・斑状に毛が抜けている、急激に大量の毛が抜け始めたといった場合は、季節性の変動以外の脱毛が関係している可能性もある。
季節性による抜け毛の増加であれば、一時的な変動としてみられることが多い。ただし、どの程度続くかには個人差があり、期間だけで季節性かどうかを判断することは難しい。抜け毛が長く続く、徐々に増えている、あるいは髪の密度低下を伴う場合は、季節変動以外の原因も考える必要がある。
なお、ミノキシジル外用薬では、使用開始初期に一時的に抜け毛が増えたように感じることがある。季節による変動とは背景が異なるため、ミノキシジルを使い始めた時期と抜け毛の変化が重なっている場合は、その可能性も考慮する必要がある。ただし、「初期脱毛だから問題ない」と自己判断せず、脱毛状態の悪化が気になる場合は添付文書に従い、医師または薬剤師に相談することが重要である。

比較の視点 季節性の変動としてみられることがある状態 確認を検討したいサイン
抜け毛の変化 晩夏〜秋など特定の季節に増えたと感じる 季節に関係なく増加が続く
髪全体の密度 明らかな薄毛の進行を伴わない 地肌が以前より目立ってきた
生え際・頭頂部 大きな形の変化がない 生え際の後退、頭頂部の薄毛が進む
抜け方 全体的に抜け毛が増える 円形・斑状、または急激に大量に抜ける
経過 一時的な変動としてみられる 長く続く、徐々に悪化する

秋の抜け毛を悪化させやすい要因|生活習慣との関わり

抜け毛が増える原因は季節変動だけではない。極端な食事制限や栄養不足、発熱を伴う病気、大きな身体的・精神的ストレスなどをきっかけに、一時的に抜け毛が増えることもある。こうした変化が秋の季節変動と重なると、「例年より抜け毛が多い」と感じる可能性もある。
ただし、「夏に受けた紫外線ダメージが秋の抜け毛を直接増やす」「季節の変わり目の自律神経の乱れが原因になる」といった因果関係が確立されているわけではない。季節だけに原因を求めず、抜け毛が増える前後に体調や生活環境の大きな変化がなかったかを振り返ることも一つの視点になる。

季節以外にも関わる抜け毛を左右する要因

秋の頭皮・髪のセルフケアで意識したいこと

季節性の抜け毛そのものを予防する方法は確立されていない。一方、季節を問わず頭皮や毛髪に過度な刺激を与えないことは、日常のヘアケアとして重要である。シャンプー時に爪を立てて強くこすらない、強いブラッシングを避ける、極端な食事制限をせずバランスのよい食事を心がけるなど、基本的なケアを続けることが望ましい。

季節性の範囲を超えて抜け毛が続く場合に考えられる対策

セルフケアを続けても抜け毛の量が落ち着かない、あるいは頭頂部や生え際の地肌が以前より目立つようになってきたと感じる場合は、季節性の変動だけでは説明できない脱毛が進行している可能性も考えられる。このような壮年性脱毛症による薄毛への対策としては、医学的根拠のある医薬品が中心になる。日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度Aと位置づけられている市販の発毛成分は、ミノキシジル5%外用薬(第1類医薬品)である。承認されている効能は「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」で、薬剤師による問診票の確認、情報提供、適正使用確認を経て購入する医薬品に分類される。
市販のミノキシジル5%外用薬の添付文書では、使用しない方がよいとされる対象として、本剤または本剤の成分によりアレルギー症状を起こしたことがある方、女性、20歳未満の方、壮年性脱毛症以外の脱毛症の方、急激な脱毛または斑状の脱毛がみられる方、頭皮にきず・湿疹あるいは炎症(発赤)等がある方が挙げられている。該当する場合は自己判断で使用せず、医師または薬剤師に相談することが前提になる。
使用中は、成分の特性に応じて皮膚症状、精神神経系、循環器系、代謝系といった分類で副作用が報告されている(発赤は頭皮以外にもあらわれることもあります)。これらの副作用が報告されているからといって、すべての人に起こるわけではない。頭皮の発赤やかゆみなど皮膚症状に気づいた場合はただちに使用を中止し、医師または薬剤師にご相談ください。動悸やむくみなど全身に関わる症状があらわれた場合は、様子を見ずすぐに医療機関を受診してください。

よくある質問

Q. 秋の抜け毛はどのくらいの期間続きますか?

A. 毛髪に季節変動があることは研究で確認されていますが、「何週間で元に戻る」と一律に決められるものではありません。季節性の変化であれば一時的であることが多いものの、抜け毛が長く続く、徐々に増える、地肌が目立ってくるといった場合は、季節以外の原因も考えて状態を確認することが大切です。

Q. 抜け毛の本数を毎日数えたほうがよいですか?

A. 本数には個人差が大きく、一日の数字だけで一律に判断することは難しい。本数の推移に加えて、毛の太さや続く期間もあわせて確認することが、状態を把握するうえで参考になる。

Q. 秋は洗い方やシャンプー選びを変えたほうがよいですか?

A. 季節に合わせて特別な方法に変える必要は必ずしもないが、頭皮に負担をかけすぎない洗浄力のシャンプーを選び、爪を立てずに指の腹で洗うといった基本的なケアを続けることが、頭皮環境を整えるうえで役立つと考えられている。

Q. 季節性の抜け毛にサプリメントは効果がありますか?

A. サプリメントは「食品」に分類される。栄養バランスの乱れが抜け毛の変化幅に関わる可能性は指摘されているが、サプリメントの摂取だけで季節性の抜け毛を抑えられるという医学的根拠は確立していない。気になる場合は食事内容の見直しを基本としつつ、必要に応じて医師や薬剤師に相談することが望ましい。

Q. 毎年秋になると抜け毛が気になります。これは体質でしょうか?

A. 毛髪に季節変動がみられることは複数の研究で報告されていますが、その程度には大きな個人差があります。毎年同じ時期に抜け毛が増えるからといって、必ず異常というわけではありません。一方、年々髪の密度が低下している、生え際や頭頂部の薄毛が進んでいるといった場合は、季節変動とは別の脱毛が重なっている可能性もあります。

まとめ

人の毛髪には季節による変動があり、研究では夏に休止期毛の割合が高くなる傾向や、晩夏から秋にかけて抜け毛が増える傾向が報告されている。そのため、秋に普段より抜け毛が目立つこと自体は、必ずしも異常を意味するものではない。 なぜこのような季節変動が生じるのか、その詳しいメカニズムは完全には解明されておらず、紫外線や発汗などを秋の抜け毛の直接的な原因と断定することはできない。また、抜けた毛の根元の形や一日の本数だけで、季節性かどうかを自己判断することも難しい。
抜け毛が長く続く、生え際や頭頂部の薄毛が進む、円形・斑状に抜ける、急激に大量の毛が抜けるといった変化がある場合は、「秋だから」と決めつけず、原因を確認することが重要になる。壮年性脱毛症に該当する場合には、ミノキシジル外用薬など医学的根拠のある対策も選択肢となる。

参照資料

・日本皮膚科学会『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版』
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品添付文書情報
・Kunz M, Seifert B, Trüeb RM. Seasonality of hair shedding in healthy women complaining of hair loss. Dermatology. 2009;219(2):105-110.
・Randall VA, Ebling FJ. Seasonal changes in human hair growth. Br J Dermatol. 1991;124(2):146-151.

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・効能を保証するものではありません。個々の症状については医師・薬剤師にご相談ください。